太陽光発電関連株の2026年展望|能力増強と価格競争激化で明暗を分ける企業の見極め方
太陽光関連株を調べるとき、私は必ず同じ前提から始めます。 パネル(セル・モジュール)の製造では、日本企業はすでに敗れている——この事実を認めないまま「太陽光は成長分野だから」と銘柄を探すと、ほぼ確実に間違えます。 この記事では、なぜ負けたのかを数字で確認したうえで、それでも日本企業が残っている領域はどこなのかを、バリューチェーンごとに整理します。
パネル製造の勝負は、とっくに終わっていた
2000年代半ば、太陽電池セルの世界シェア上位にはシャープ、京セラ、三洋電機といった日本企業が並んでいました。 いまその面影はありません。セル・モジュールの世界生産能力は8割以上が中国に集中し、 モジュール出荷量の上位はLONGi、JinkoSolar、Trina Solar、JA Solarといった中国勢がほぼ独占しています。
日本側の撤退・縮小は、そのまま企業の意思決定として記録されています。 パナソニックは2021年に太陽電池の自社生産からの撤退を表明し、翌年に生産を終了しました。 京セラも2023年にセルの自社生産を終えています。シャープも国内生産を大幅に縮小しました。 いずれも「環境意識が足りなかった」から撤退したのではありません。単純に、価格で勝てなかったのです。
なぜ負けたのか——価格の桁が違う
モジュールのスポット価格は、2010年頃には1Wあたり1.5ドル前後でした。それが2020年頃に0.20ドル前後まで下がり、 2024年以降は0.10ドルを割り込む水準で推移しています。15年で10分の1以下です。 これは技術革新だけの結果ではなく、中国国内で世界需要のおよそ2倍という生産能力が積み上がった結果でもあります。
ここで見落とされがちな点を書いておきます。 シェアを取った中国大手ですら、モジュール事業では巨額の赤字を出しています。 2024年前後、上位メーカーは軒並み最終赤字に沈みました。つまりこの領域は、勝者すら儲からない構造になっている。 「日本が負けた」というより「誰も勝っていない」というのが実態に近いと私は見ています。
教訓:世界シェアを取った企業が儲かるとは限りません。 製品がコモディティ化した工程では、シェアは利益ではなく在庫と減損に変わります。 太陽光に限らず、私は「シェア○%」という数字を見たら必ず粗利率とセットで確認するようにしています。
FIT単価の下落が、川下の採算まで変えた
製造だけの話ではありません。発電事業そのものの収益性も、この10年で別物になりました。 2012年度の事業用FIT(固定価格買取制度)単価は40円/kWh(税別)でした。 直近の10kW以上50kW未満の区分は10円/kWh前後で、およそ4分の1です。 さらに2022年4月からはFIP制度が始まり、一定規模以上の新規案件は市場価格連動+プレミアムに移行しました。 発電事業者が価格変動リスクを自分で負う設計に変わったということです。
加えて、日本では適地が減っています。造成が必要な傾斜地しか残っていない、地域との調整に時間がかかる、農地転用のハードルが高い。 用地取得コストと系統接続の待ち時間が、パネル価格の下落分をかなり食っています。 「パネルが安くなったから儲かる」という単純な図式は、日本国内では成立していません。
では、日本企業はどこで戦えるのか
私はバリューチェーンを7つに分けて見ています。結論から言えば、「輸出できる工程」ほど日本勢は弱く、「現地に人と拠点が要る工程」ほど残っているという、身も蓋もない構図です。
| 領域 | 世界での日本勢シェア | 国内案件での日本勢シェア | 価格下落圧力 | 私の評価 |
|---|---|---|---|---|
| ポリシリコン・ウエハ | 1%未満 | 1%未満 | 極めて強い | 戦う土俵にない |
| セル・モジュール製造 | 1%前後 | 2割前後 | 極めて強い | 撤退・縮小が継続 |
| パワーコンディショナ | 1割弱 | 5割超 | 中程度 | 系統連系の認証が壁として機能 |
| 架台・施工資材 | — | 8割超 | 中程度 | 物流コストが参入障壁 |
| EPC(設計・調達・施工) | — | 9割超 | やや強い | 実績と与信で選別が進む |
| O&M(運用・保守) | — | 9割超 | 弱い(単価維持) | ストック型で最も安定 |
| ペロブスカイト | 商用化前 | 商用化前 | 未確定 | 評価は保留 |
私が相対的に注目しているのはO&Mです。理由は単純で、パネルが安くなるほど設置容量が増え、管理すべき発電所の数が増えるから。 しかもO&Mは現地に人を出す仕事なので、中国から輸入できません。 FIT開始初期(2012〜2015年)に建った設備が10年選手になり、パワコンの更新需要も出始めています。
一方でEPCは注意が必要です。国内シェアは高いものの、案件が減れば価格競争になります。 売上が伸びていても完成工事総利益率(工事粗利率)が落ちている企業は、 受注を取りにいって採算を削っている可能性が高い。ここは決算短信で必ず確認しています。
ペロブスカイト——期待と現実を分けて見る
国内で最も語られているテーマがペロブスカイト太陽電池です。期待される理由は明確で、 軽量で曲げられるためビル壁面や耐荷重の低い屋根に置ける、原料のヨウ素を日本が世界生産の3割前後を占める国内資源として持っている、という2点です。 政府も2040年に20GW規模の導入という目標を掲げ、GX関連の基金から量産化支援が入っています。
ただ、現実の側も同じ強さで書いておく必要があります。
- 効率のギャップ:研究用の小面積セルでは変換効率26%超が報告されていますが、大面積モジュールでは15〜20%程度に落ちます。「シリコンを超えた」という見出しは、たいてい小面積セルの話です。
- 耐久性:結晶シリコンの製品保証は25年が業界標準です。ペロブスカイトは水分・熱・紫外線に弱く、屋外10年をどう担保するかがまだ課題として残っています。
- コスト:量産初期は1Wあたり0.10ドルの結晶シリコンより確実に高い。だから当面の市場は「シリコンを置けない場所」であって、既存パネルの置き換えではありません。市場規模の前提が違います。
- 中国も走っている:技術で先行しながら量産で抜かれる展開は、液晶でもリチウムイオン電池でも起きました。研究の先行はリードタイムであって、堀ではありません。
2026年時点で、ペロブスカイトを意味のある売上として計上している日本企業はほぼありません。 つまり関連株が動くのは実証案件や提携のニュースが出たときだけで、それは業績ではなく期待の変動です。 私はこの領域を「保有していれば大化けするかもしれないが、外れても説明がつく範囲」までしか持たないと決めています。
私が見ている指標と、いま気にしているリスク
銘柄ごとの推奨はしませんが、私がどの数字を追っているかは書いておきます。
- EPC企業:受注残高と完成工事総利益率。売上成長より粗利率の方向を優先して見ます。
- O&M企業:管理容量(MW)の推移と、1MWあたりの年間受託収入。継続率が落ちていないか。
- パワコン・周辺機器:海外売上比率と為替感応度。国内だけだと市場が縮みます。
- 発電事業者(IPP):FIT案件とFIP案件の構成比、加重平均売電単価、FIT満了案件の再契約単価。
リスク面で最も軽視されていると感じるのが出力制御です。 九州エリアでは早くから再エネの出力抑制が常態化し、その後、東北・中国・四国など他エリアにも広がりました。 出力制御が増えると、同じ設備でも発電量=売上が想定を下回ります。事業計画のP50想定がそのまま外れる要因です。
もう一つは金利です。太陽光発電所はプロジェクトファイナンス依存度が高く、 借入比率の高い事業者ほど金利1%の上昇でIRRが目に見えて低下します。 2026年の日本の金利環境は、FIT黎明期の前提とはまったく違います。過去の高利回り案件の実績値をそのまま将来に延長するのは危険だと考えています。
まとめると、私の見立てはこうです。製造で戻ることはない。だが運用・保守・施工という「現場」の需要は、設備が増える限り増え続ける。 派手さはありませんが、投資対象として評価するならそちらの数字を追うほうが再現性があると考えています。 ペロブスカイトについては、量産ラインの歩留まりと屋外実証の耐久データが公表された段階で、あらためて評価し直すつもりです。